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    稍意地の悪い、きびしい調子であつた。

    「おれはまだ一本立ちの医者といふわけにはいかない」

    「いつこちらへお帰りでしたか」

    「どうもおれは、身近かな者だと平気で診られないんだね」

    見る見る癇癪かんしやくを起しさうになつた練吉は、その時ふと或ることを思ひ出して黙つた。

    と、小谷はひとり言にしては大きい声で云つた。が、代りがないので又水の中へ放つた。

    房一はむつつりとしたまゝ答へた。

    「あの人は来まいて」

    「あの訴訟はどうなつたのかね」

    今それを思ひ浮べたとき、房一はふいに一種の怒気を感じた。それは疾やましさのないはげしい敵意、何かしらぐつと相手を地面まで押しつぶしてしまひたいほどの、腹の底からこみ上げて来る得体のしれない力だつた。

    「おい、早く早く」

    「よし。今行く」

    「へえ。ちよつとばかし――」

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